式典

沖縄科学技術大学院大学は令和3年11月に、設立10周年の節目を迎えました。 この節目を記念すべく、令和4年5月に、式典を執り行う運びとなりました。

この記念式典は、本学の開学以前から成長を支えて下さった多くの方々、博士課程を修了した 若き卒業生たち、教職員全員にとりまして記念すべき日となります。

式典には、学界、産業界、そして政界を代表する来賓を国内外より御招待し、ノーベル賞受賞者で あり元英国王立協会会長の、ヴェンカトラマン ラマクリシュナン(Venkatraman Ramakrishnan) 博士より記念講演をいただく予定です。

この記念式典は、国際的に傑出した研究、教育、そしてイノベーションにおける過去10年に渡る 歩みを振り返るとともに、次の10年の成長と新たな発展を展望する特別な機会となります。

基調講演

豊かさと幸福を支える基礎科学 ヴェンカトラマン ラマクリシュナン博士(ノーベル賞受賞者、元英国王立協会会長)による基調講演

各国の経済成長は、テクノロジーの基礎知識を活用する能力と密接に関係しています。歴史を通して、知識が豊富で資源に乏しい国の方が、資源が豊富で知識に乏しい国よりもはるかに良い業績を上げてきました。本日の講演では、基礎科学、応用科学、技術の関係について、数十年にわたる分子生物学の基礎研究への投資が、いかに新型コロナ蔓延への迅速な対応につながったかを例示しながら説明いたします。また、政府が基礎科学への投資を主導することが重要である理由についても言及する予定です。

講演者プロフィール

ヴェンカトラマン ラマクリシュナン博士

1971年にインドのバローダ大学で物理学の学士号、1976年にオハイオ大学で物理学の博士号を取得。その後、カリフォルニア大学サンディエゴ校で2年間生物学を学び、エール大学のピーター・ムーア教授のもとで博士研究を始める。1999年からは、英国ケンブリッジにあるMRC分子生物学研究所のグループリーダー。2009年にノーベル化学賞を受賞し、2015年から2020年まで英国王立協会会長を務めた。

2000年に博士は、30Sリボソームサブユニットの原子構造と、リガンドや抗生物質との複合体の構造を決定しました。これらの研究により、リボソームがどのように遺伝子コードを「解読」するか、また、抗生物質の機能についての知見が得られました。その後、ラマクリシュナン教授の研究室では、翻訳経路のさまざまな段階におけるリボソーム全体の機能的複合体の高分解能構造を決定し、遺伝子解読、ペプチド転移、翻訳、終止におけるタンパク質合成の役割に関する知見を得るに至りました。最近では、クライオ電子顕微鏡を用いて、真核生物やミトコンドリアの遺伝子の翻訳を研究しています。

ラマクリシュナン教授はまた、リボソームの構造をめぐる発展において、飾り気のない人気回顧録『Gene Machine』の著者でもあります。